
作業がひと段落し、御子神さんの手が空いたタイミングで、
ウイスキーを熟成しているステンレスのタンクを開けてもらう。
タンクを覗くと、まるで水のような無色透明の液体で充されている。
ウイスキーの琥珀色は、じつは樽から滲み出してくるものだ。
樽に使われている木の成分が、ゆっくりと液体に溶け込み、深い色を与えていく。
だからこそ、長く寝かせるほどに色が濃くなっていくし、香りや味にもニュアンスが宿っていく。
もちろん、日本では色味の調整にカラメルを使うことも認められている。
けれど今回は、あえて、そのどちらでもない形も試してみた。
麦のまま、どこまで届くのか確かめてみたくなったからだ。
グラスに注ぎ、そっと口にふくむ。
原酒のアルコール度数は高く、舌にすこしピリッと刺激がある。
けれどその奥に、ふっくらとした甘さと、香ばしさがひろがっていく。
ああ、これはたしかに、私たちらしいと思った。