Field “Tasting” Notes

2025/06/13 20:15

昔は、空き地にポン菓子屋さんがやってきて、あのキャノン砲のような装置で目の前で「ポン!」とやってくれたらしい。
自分は、その光景をリアルでは見たことがないけれど、どこかノスタルジックで、「今もバリバリ現役でポンしてます!」という業者さんはそう多くなさそうだ。

ネット検索してみると、比較的近いところに1件のポン菓子販売店があった。

車を30分ほど走らせ、その店に向かう。

扉を開けると、ふわっと甘い香りが迎えてくれた。麦の入った紙袋を抱えて、おそるおそる「麦でもできますか?」と聞いてみた。
おかみさんは、ちょっと申し訳なさそうな顔をして、「数年前まではやってたんやけど、今は麦、やってないんよ」
麦は米より粒が大きく、膨らませるにはより強い圧力が必要になるらしい。
そのぶん、機械にも負担がかかるので、今はもう麦は受けていないのだという。

がっかりはしたけれど、仕方がない。
小さくお礼を言って、店をあとにした。

落ち込む間もなく、他にポン菓子が作れるところが近くにないかと、すぐに”ポン菓子”というキーワードを地図で検索してみた。
すると、店名ではなく”ポン菓子・パットライス加工販売”と書かれた場所が表示された。

ストリートビューで確認してもお店らしきものは見当たらず、とりあえず記載されている電話番号に電話をかけた。

「大麦をポン菓子にして欲しいんです。」
 男性は、「麦で?やったことないけど、たぶんできるよ」との返答。

車で5分程度走らせ、地図が示す”ポン菓子・パットライス加工販売”に向かった。

たどり着いた先は、保険代理店だった。
恐る恐るチャイムを押すと、男性が出てきて、中に招き入れてくれた。
そこはやはりどう見ても、事務所だった。

しかし、玄関先には袋に入ったポン菓子がどっさりと積まれていて、奥の部屋には、ポン菓子機が、堂々と鎮座していた。

話を聞くと、男性は今も保険代理店を営んでいるそうだ。
でも、コロナ禍のときに「何か新しいことを」と思い立ち、昔やっていたポン菓子づくりをもう一度始めたのだという。

さっそく、持ってきた麦を計る。1kg。お米なら1.4kg入れるところだけど、麦は圧をかけるぶん少なめにするらしい。

機械がくるくると回る。どんどん圧が上がっていく。ここ、というタイミングで、蓋を開けた。

「バーン!!!」

「ポン」とか可愛い音じゃなく、凄まじい爆発音が室内に響き渡った。
白煙と共に香ばしい香りが部屋中に広がる。膨らんだ麦は、ふっくらとして、クラック模様が入っていた。

まだ温かい麦を袋に入れ、湿気がこもらないように口をあけたまま車に積み込む。
走り出すと、車の中はすぐに香ばしい匂いでいっぱいになった。
なんだか、ちょっと懐かしい気持ちになりながら帰路についた。

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