The Barley Diary
2025/06/12 21:43

2025/1/10 (雪)
麦芽づくりは農家さんの倉庫で行う。
屋根はあるものの、空調設備などはなく、外気温はほぼ0度だった。
まずは麦に水つける。セオリーでは1.5倍まで水を吸わせる。水が冷たく、身に染みる。
しばらく浸けた後、水から揚げる。空気に触れさせて、また数時間後に水に浸けて、を繰り返す。
氷が張る。まずいこれは麦が凍ってしまう。急遽、三原飴店で頂いた筵を被せて保温する。なんとか凍らず吸水させる事ができた。
次は発芽の工程に移る。
翌日、農家さんの倉庫へ向かう。麦の様子を見に行く。
倉庫のシャッターを開けると、ひんやりとした空気が外から流れ込んできた。
まだ1日目。見た目には何の変化もない。
麦を詰めたネット袋は水を含み、冷たく、手を入れると指先がじんじんと痛む。
2日目、3日目になっても、根は出てこない。
冷たい空気のなかで、麦はただ眠っているみたいだった。
ここ数日、香川は寒波の影響で風が強く、ちらちらと雪が舞っていた。
スマホを手に取り天気予報を確認すると、今日の気温は最高でも5度に届かない。
平均気温が1度。倉庫全体が冷蔵庫のようだった。
「この温度では麦が発芽しないかもしれない」
そう思い、急遽ホームセンターへ走って断熱材を追加する。適当なサイズにカットし、麦を入れている箱にぐるりと巻き付け、さらに上から筵を被せた。
4日目。
温度は10度前後まで上がっていた。
手を入れて確かめると、ほんのわずかにぬくもりが感じられる。
よく目を凝らすと、麦の先端から、細く小さな白い根がちょこんと顔を出している。
少し安心した。
5日目。
期待して袋の中をのぞく。下の方の麦は、しっかりと5ミリほど根が伸びている。
でも、袋の上部は、昨日とあまり変わっていない。
毎日撹拌していれば、全体が同じように育つと思っていたけれど、そう簡単にはいかないらしい。
ネット袋の中に手を差し入れて、麦をやさしくかき混ぜる。
水分、空気、温度――すべてを均等に行き渡らせるように。
6日目。
袋の中の下の麦はさらに伸びて、根が1センチほどに育っていた。
麦芽としては理想的な状態。
でも、上のほうの麦は、まるで時間が止まったように変化が乏しい。
ばらつきが大きく、気がかりだった。
結果は……失敗だった。
根の伸び方に大きな差がありすぎた。
原因は明らかだった。
農家さんの倉庫はスレートの外壁のため外気の影響を受けやすく、いくら断熱材やむしろで工夫しても、極寒の中での温度調整は難しかった。
さらに、倉庫までは車で30分。麦の変化に気づき、素早く対応するには、もっと目の届く環境が必要だ。
麦芽づくりの拠点を、外気の影響を受けない、温度が安定した場所に移す必要があった。