The Barley Diary

2025/01/22 15:42

ウイスキーの原料となる麦芽作りの基本は、主に三つの工程に集約されている。

1. 浸麦…麦に水を吸わせる
2. 発芽…麦を発芽させる
3. 乾燥…麦の発芽を止め乾燥させる

シンプルな流れに見えるが、それぞれの工程には時間や湿度、温度など微妙な調整が必要となる。

浸麦では水温や浸ける時間を調整し、発芽では適切な湿度や温度管理を見極め、すべての麦の成長具合を揃える必要がある。
また乾燥では酵素を壊さないように段階的に温度を上げながら、乾燥度合いを見極める。

麦芽の製造方法は、伝統的なフロアモルティングといった製法もアイラ島などで一部残っているものの、
現代では、これらの全工程がほぼ機械によって自動化され、芽が生えるタイミングや水分含有量が精密に管理されている。

昨年、mitosaya薬草園蒸留所でウイスキーに使う麦芽を作ったが、香川にも麦芽を作っている場所があると聞き、興味を持った。

その場所は、ウイスキーやビールのためではなく、なんと麦芽を使って食用の飴を作る“三原飴店”。
300年以上の歴史を持つこのお店では“ぎょうせん飴”という飴を作り続けているという。
その甘さは、麦芽ともち米だけで紡がれる、素朴で優しい味わい。

三原飴店の物語の始まりは約300年前。
麦作のかたわら現金収入の手段として、お嫁さんがぎょうせん飴を作ったことが始まりだという。


昨年末、気になっていたそのお店へ足を運んだ。

お店は静かな住宅地の一角に佇んでいた。
扉を開けると、お店の奥に大きな釜が見える。これで飴を炊くのだろうか。

心の中で高鳴る鼓動を抑えつつ、奥から現れたご主人にこう告げた。
「すみません、ウイスキー用の麦芽を作りたいんですが、何かお手伝いさせていただけませんか」

すると、思いもよらない返事が返ってきた。
「年に一度、年末から年始にかけて麦芽を作る作業をしているのでよければお越しください」

いったい、日本で300年続く麦芽の作り方とはどのようなものなのか――。
その秘密を知るために、私は三原飴店に改めて訪れることとなった。






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