The Barley Diary
2024/12/24 17:58

今年の夏、大型特殊免許を取った。公道でトラクターを運転するためだ。
農業大学校という専門学校で、農業への就職を目指す学生たちと一緒に講習を受けた。毎週水曜日、1ヶ月間。校内のコースで一時停止や後方確認など、まるで自動車教習所さながらの指導を受け、なんとか免許を手に入れた。
だが、実際に畑でトラクターを運転するのは、もっと大変だった。
本来、畑に麦を植えるには、土を一定の深さまで掘って畝を作り、種を等間隔に蒔き、肥料を撒いて、再び土を戻すという一連の作業を、畑全体に行う必要がある。
東京ドーム10個分の畑を管理している農家さんから借りた60馬力の巨大トラクターは、一筋走らせるだけで、麦を植えるためのすべての工程が自動で完結してしまう。頼もしいけれど、なんだか少し寂しい気持ちもある。私が触れるのはレバーやボタンだけで、土の感触や風の匂いが遠くに感じられるからだ。
そんな感傷的な気持ちも、エンジンをかけると爆音とともにかき消される。アクセルを踏むと、動き出す…はずだったが、なぜか後ろに下がる。「あれ?進むのってどうするんだっけ?」と頭が真っ白。
普段からそこそこ大きな車に乗っていたので、運転には自信があったはずなのに、ここは畑。中央線も停止線もない。真っ直ぐ進むつもりが、気がつけば曲線を描いた畝が10メートルほど続いている。なんとか乾いた白い土を耕し、畑全体が湿ったグレーに変わったとき、オセロの駒が一気に裏返ったように見えた。