The Barley Diary
2024/12/24 17:55

高松から車で東に1時間。山を切り開いた段々畑に着く。軽トラから降り立つと、乾いた土のザクザクした感触が長靴越しに伝わる。12月の空は高く、風がどこからともなくひゅうっと抜けていく。
今日は特別な日だ。借りた畑に、初めて麦を植える日。
この1年間、香川にわずか数軒しかない二条大麦農家のひとつを訪ね続けた。畑仕事はおろか、ベランダで育てていたパクチーさえも枯らしてしまった私が、最初に「ウイスキーを作りたいんです」と突然話したときの相手の驚いた顔を、今でも忘れられない。
でも、農家の人たちは私を温かく迎えてくれて、畑仕事の手つき、種まきから麦踏み、収穫、乾燥に至るまでの麦を育てる一連の流れを、ひとつひとつ丁寧に教えてくれた。
それから1年、あの時、小麦と大麦の違いさえ知らなかった私が、こうして自分の畑に立つ日が来るなんて。
紙袋から取り出し、手のひらに乗せた小さな粒が、いつかグラスに注がれる液体に変わる。そう思うと、やっぱり種は軽いけど、心の中ではずっしりと重く感じた。